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ローカルベンチャーオープン戦略会議#8「ポイントカードを活用した地域マーケティングの始め方 ~『気仙沼クルーカード』を紐解く〜」を開催しました

2023.10.24
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2023年10月5日、ローカルベンチャー(LV)オープン戦略会議*の第8回として、「ポイントカードを活用した地域マーケティングの始め方 ~『気仙沼クルーカード』を紐解く〜」をオンライン開催しました。

*LVオープン戦略会議は、全国の地域で活躍する多様なプレイヤー(自治体、起業家、企業など)が学び合う勉強会です。毎回、LV協議会に参画する地域のプレイヤーが自身の探求したいテーマを選定。そのテーマにふさわしいゲストを招いて実践事例の共有とディスカッションを行います。

今回のテーマは、地域マーケティングにおけるポイントカードの活用法について。ポイントカードや地域通貨の導入にあたり、成功のポイントはどこにあるのか。開始から6年余りで会員数5万人を突破した「気仙沼クルーカード」の仕掛け人の一人、一般社団法人気仙沼地域戦略 理事・事務局長の小松志大(こまつ・もとお)さんをゲストにお迎えして伺いました。

■ 気仙沼クルーカードとは?

気仙沼市で2017年4月にスタートしたポイントカード。現在はアプリでも提供している。「気仙沼で暮らす人や、故郷をはなれて想う人、ボランティアや観光客もみんながこの船に乗りあう『クルー(乗組員)』になる。」をコンセプトに運営され、現在の会員数は5.2万人。うち2万人が気仙沼市民で世帯数とほぼ同数。3万人は市外の会員で、加盟店も仙台や首都圏まで拡大中。

■小松さんのお話のポイント

・「気仙沼クルーカード」のようなポイントカードシステムをつくりたい、どうすればうまくいくか、という質問をよく受けるが、その前にもう少し全体を俯瞰して考えるべき。

・気仙沼市は「海と生きる」と謳い、アイデンティティとして海に畏敬の念を持つ。気仙沼クルーシップとは、気仙沼市民がみな、その海に浮かぶひとつの船の乗組員になるという意味だ。そこに、震災を機に縁のできた市外の人たちにも一緒に乗り組んでもらう。気仙沼クルーカードは一緒に「未来を創る市民証」という位置づけだ。

・必要なのはそういう大きなコンセプト(世界観)。ツールや仕組みがあっても、その上位にあるコンセプトをちゃんと作らなければ誰も共感してくれない。カード加盟店を募るときも、コンセプトから入らないと事業オーナーは動かない。

・気仙沼地域戦略というDMOを創ったのは地域経営・地域マーケティングのため。マーケティングにはデータが必要で、その収集の手段(顧客の購買行動の把握)、および顧客とコミュニケーションをとる手段としてポイントカードを導入した。ポイントカードをつくること自体が目標ではなかった。

・逆に、ポイントで顧客を囲い込もうという発想は地域の独りよがりだ。自分たちの町のものを買ってくれ、というプロダクトアウトの思想ではファンは増えない。顧客は何を求めているか、その声をていねいに聞き取るのが大事。気仙沼ファンのクルーカード会員はアンケートを送るとすぐ答えてくれる。他の地域でもそういう仕組みは作れるはず。

・地方創生とは基本的に「稼ぐ地域を目指す」ということだが、そもそも自分の町の現在の売上を把握している自治体は少ない。現状がわからなければ目標は立てられないし、立てた目標にだれも責任を持たない。気仙沼でも、まず産業連関表をつくって生産額(売上)や産業構成比を把握するなどの取り組みを行っている。

・地域マーケティングにはほかにも様々なデータが必要だ。以前からいろいろデータはあったが、収集方法が目算でいい加減なものもあり、報告頻度も低かった。ポイントカード導入によって正確で詳細なファクトデータがほぼリアルタイムでとれるようになった。

・データを収集したら、まず自分が理解し、次にみんなで共有・利用できるようにするのが重要。たとえば物販・飲食・宿泊など業態別にコロナ前と比較したデータを見ると、いまはどこに集中して施策を打つべきかが見える。また、業態ごとの閑散期が正確にわかれば、いつ誘客すれば効果的か見えてくる。

・地域マーケティングは地域ブランディング。行政だけでも民間だけでもダメで、官民連携が大事だ。

・ポイントカードの延長で地域通貨を考えるところが多いが、地域ポイントと地域通貨はステージがまったく異なる。通貨は国家そのものであり、地域通貨の導入には日本から独立するくらいの強い意志が必要。気仙沼でも2~3年前から検討はしているが、まだ成功イメージができない。流行ワードに踊らされず、整理しながらやりたい。

■今回のテーマの発案者、鹿児島県錦江町(きんこうちょう)役場の小川純一さんの感想

マイナンバーカードの利用機会創出、給付の効率化や利用データ収集ができる地域通貨の導入を検討しているが、小松氏の言う「コンセプト」とはブランドの世界観に近く、町の方針や町の方向性とは違うものだとわかり、まず、そこまで地域としてステップアップする必要があると感じた。